研究開発

D-セドヘプツロース
~放線菌が可能とした
希少糖の高生産~

長瀬産業では、放線菌が生産するD-セドヘプツロースに着目し、N-STePP®を用いて大量に生産する技術を開発しました。

D-セドヘプツロースとは

D-セドヘプツロース (以下セドヘプツロース) は天然に存在する希少な糖の一つです。グルコースなどの6単糖、キシロースなどの5単糖と異なり、自然界でも珍しい7単糖である点は非常に特徴的です(図1)。セドヘプツロースは1917年にベンケイソウ(Sedum spectabile) から発見されましたが1、その希少性からこれまで生理活性などの研究はほとんど行われておりません。乾燥に対して強い耐性をもつベンケイソウとそこに豊富に含まれるセドヘプツロースに、何らかの因果関係があるのか興味深いところです。

図1 D-セドヘプツロース

一方、セドヘプツロースのリン酸エステルであるセドヘプツロース-7-リン酸は生物の中央代謝であるペントースリン酸経路の中間体であると共に、光合成における代表的な炭素固定回路であるカルビン・ベンソン回路の中間体として、生物代謝において重要な役割を担っています。
近年、セドヘプツロースのリン酸化を触媒するセドヘプツロースキナーゼ(CARKL)が、その代謝制御を介して炎症性免疫応答を制御することが明らかとなりました(図2)2。これは、代謝と免疫の相互依存関係を裏付ける結果であり、この相互依存関係に対しセドヘプツロースがどのような役割を担うのか、さらなる研究が期待されます。

【図2】 CARKLの制御機構 Cell Metabolism (2012) 15:813-826 Figure 7

Streptomyces属放線菌によるセドヘプツロース生産

Streptomyces属放線菌がセドヘプツロースを生産することは古くから知られていましたが、その生産量はごく僅かでした3 。さらにセドヘプツロースの用途は、炎症の治療や予防4 、およびサプリメントや栄養補助食品5などとして期待されているものの、実用化に至っていません。ナガセバイオイノベーションセンターでは、放線菌を宿主とした物質生産技術開発を進める中で、代謝改変によりセドヘプツロース生産が劇的に向上することを見出しました6 。本技術開発により、セドヘプツロースの機能研究を加速し、実用化へ向けた検討へ供給できるようになりました。

引用文献

1. F.B.La Forge and C.S. Hudson. Sedoheptose, a new sugar from Sedum Spectabile. I J. Biol. Chem. (1917) 30:61-77

2. Haschemi A, et al. The Sedoheptulose Kinase CARKL Directs Macrophage Polarization through Control of Glucose Metabolism. Cell Metabolism (2012) 15:813-826

3. Okuda T, et al. Accumulation of sedoheptulose by Streptomyces. J. Biochem. (1963) 54:107-108

4. 特許第6388635号

5. 特許第6611702号

6. WO2019208747

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